自分の死後、高齢あるいは認知症の配偶者の財産を適切に管理してほしい | 越谷 相続・遺言 相談室
民事信託を活用したケースその2:自分の死後、高齢あるいは認知症の配偶者の財産を適切に管理して幸せな余生を送らせてほしい
Aさんはいま、重い病を患っています。しかしAさんの妻であるBさんも認知症になり、身の回りのことを自分ですることができない状態にあります。
Aさんは自分が先に死亡した場合、妻のBさんに全財産を譲り、生活や介護の費用に当ててほしいと考えていますが、Aさん夫婦には子供がおらず、Bさんは認知症のため遺産を相続してもその遺産を管理することができるかとても心配です。
Aさんの相続後すぐにBさんが遺産を浪費してしまったり、誰かに騙されて遺産を奪われてしまうこと防止するためにはいったいどうすればよいのでしょうか。
民事信託を活用した解決例
このような事例においては、遺言代用信託という信託方法を活用することで解決することが可能です。
遺言代用信託とは、委託者が生存している間は、委託者自信を信託の受益者として受託者から財産を受け取り、その委託者(=当初受益者)の死亡後は信託契約で指定された者が受益権を取得するという仕組みです。
結果的に遺言と同じ機能を持つため、その名の通り遺言に代わる信託の方法なのです。
今回のケースの場合、Aさんがなくなった際に、信頼できる親族か信託会社に遺産を信託し、妻Bさんの生活のために必要に応じてその遺産をBさんに提供してもらうという内容の契約書を前もって作成しておきます。
こうすることで、Aさんの遺産は信頼できる親戚か信託会社が管理をすることになり、妻のBさんが浪費することや、騙されて奪われてしまうことがなくなると同時に、Bさんが必要なときに遺産を提供してもらうことができます。
遺言代用信託とよく似た言葉で、「遺言信託」というのがあります。こちらは、遺言書を作成し、その中で「誰々に何の財産を信託し…」と記載しておくものです。
信託は契約ですので相手(受託者)の同意が必要となり、実際には遺言書作成の段階で受託者となる方に就任してもらえるかの意思を確認することが不可欠となるでしょう。また、遺言作成時には受託者への就任承諾をしていたとしても、遺言者が死亡するときに気が変わって就任しないということもありえますので、その点注意が必要です。遺言信託は、遺言者が死亡したことを条件として効力が生じる信託を記載した遺言が土台となっていますので、その内容を着実に実現するためには、遺言執行者を定め、その就任が不可欠となります。
そうでなければ、相続人全員が遺言書と異なる遺産分割協議をおこない、相続人が遺言と異なる内容の遺産分割をしてしまう可能性もあります。これでは遺言者が遺した信託への想いは消え去ってしまいます。
遺言信託は委託者が死亡し、遺言が有効になる時までは信託自体の効力が生じません。その点遺言代用信託は、委託者と受託者が信託契約を交わした時点から効力が生じるため、その分今回のようなケースでは不確定要素が少ないので有効といえるでしょう。
Aさんのようなお悩みで、信託を使って想いを現実にしたいならば、遺言代用信託で生前に契約書をしっかり作っておくべきでしょう。
なお、信託会社を受託者として信託した場合は当然ながら報酬を支払う必要がありますが、親戚を受託者とした場合であっても財産管理のお礼として月額等で信託報酬を信託財産から支払うこともできます。