(負担付)死因贈与契約 | 越谷 相続・遺言 相談室
死因贈与契約とは、「贈与者の死亡によってその効力を生じる」という条件をつけて財産を贈与するという契約のことです。これになんらかの負担をつけたものが負担付死因贈与契約です。
死因贈与契約の特徴は以下の通りです。
◇贈与を受ける側の承諾が必要
◇契約とともに贈与の権利義務が発生する
◇原則として一方的な撤回は不可
死因贈与契約は贈与をする方と受ける方との合意に基づく「契約」であるため、どちらかの当事者が一方的に破棄や撤回をすることができないのです。
これに似た方法として「遺贈」がありますが、これは遺言を残した者の単独行為であり、遺贈の相手方である受遺者は、遺言者の死亡後にいつでもこれを放棄することができてしまいます。
また、遺言書で遺産の分割方法の指定をしても、遺言執行者がいなければ、共同相続人、受遺者全員の合意により、遺言内容と異なる遺産分割協議をすることは可能です。
したがって死因贈与契約は、特定の人に財産を引き継いでもらいたいという想いを確実に実行するためには、とても有効な手段と言えます。
この方法もまた遺言を残す場合と同様に、贈与する者の妻、子、親から遺留分減殺請求権を行使される可能性がありますので、
遺留分をしっかり考慮した設計が必要となるでしょう。
負担付死因贈与契約の「負担付」
「負担付」というのは、贈与をする方が贈与を受ける方に、何らかの義務・負担を負わせることです。
具体的には、「今後の身の回りの世話を続けて欲しい」、「同居して面倒を見て欲しい」といったケースが多く、遺言書よりも実行の確実性があり、成年後見よりも自由度が高いという点で、使い勝手の良い制度になっています。
(負担付)死因贈与契約の注意点
(負担付)死因贈与の手続きにおいて、注意をしなければならないのは、契約内容が曖昧で実行に疑義が生じたり、相続人間でトラブルが起きたりしないようにしておくことです。
そのために大切なポイントは以下の通りです。
-
贈与の対象となる財産を明確に決めておくこと
・贈与財産が預貯金の場合には「銀行名」「口座の種類・番号・名義人」を明示します。
また、不動産については登記事項証明書を取得し、「所在」、「地番」、「家屋番号」等を当事者同士で確認しておきましょう。
-
負担付の場合には負担の内容をできる限り具体的に定めておくこと
・「死亡するまで同居して面倒を見てもらいたい」「毎月必ず1回以上入居施設に来て様子を見てほしい」など、財産を贈与してあげる人に何をしてもらいたいのか、具体的かつ明確に示しておくことが必要です。ここが曖昧になると贈与者が期待していたことをしてもらえなくなってしまいます。
-
贈与する財産、負担の内容を明確に決めたら、契約の内容を書面で残すこと
・死因贈与契約というのは一般的な贈与契約と同様のものであり、書面になっていないと贈与をする方が後で撤回することができてしまいます。負担付死因贈与を受ける場合、負担が前提ですから、後で撤回されないために、契約書という形で書面に残しておくことが大変重要です。
・贈与財産の情報(預金口座であれば「銀行名」「口座の種類・番号・名義人」 不動産であれば「所在」、「地番」、「家屋番号」等を登記事項証明書の記載)を契約書に詳しく明確に記載すべきです。
公正証書を利用する
契約内容を書面にする際に、強くお勧めしているのが公正証書にして残すということです。
公証役場に行かなければならないので、その分手間も費用もかかります。しかし公正証書で贈与契約書を作成すれば、その有効性を否定される可能性を抑えることができるので、作成にかかる手間や費用を上回る確実性や安心感を得られます。
負担付死因贈与契約の解除
契約締結後、何らかの事情で負担付死因贈与の解除をすることは、状況によっては可能です。
その状況とは、契約で定められている負担が履行されたかどうかという点が大きな焦点になります。
負担付死因贈与契約において、その負担がいまだ履行されていない場合には贈与を解除することが可能です。
負担のない死因贈与契約はいつでも解除することができます。
負担の全部又は一部が履行されている場合には、解除できないのが原則です。ただし「やむを得ない特段の事情」がある場合には解除が可能となります。
死因贈与契約においても、遺言と同様にその内容の実現のため執行者を定めることができます。
過去の例では、死因贈与契約の内容は他の相続人と利害対立を引き起こすことが多いため、第三者的に司法書士などの専門家を指定しておくことをお勧めします。