種類株式の活用 | 越谷 相続・遺言 相談室
定款整備・内容確認
日本の中小企業の場合、経営者である社長が自社の株式のほとんどを所有し、残りの株式を親族や信頼している役員が保有するといった状況が多いのではないでしょうか。
これは経営者が大株主として実質的にその会社を支配しているということになります。
つまり会社を株主として所有する者と、会社を経営するものがイコールとなっているのです。
このような状況の会社の経営者が亡くなると、何も対策をしていなければ経営者=所有者という構図が崩れてしまうことがあります。
また経営者のことを全く知らない株主が会社にかかわってくるということも考えられます。
そうなれば会社経営が傾いてしまうこともありえます。
このような状況に備えて、会社の定款をしっかり整備しておけばある程度トラブルを予防することが可能です。
定款とは、会社を運営していくうえでの基本的な規則をまとめたものです。会社の商号や、事業内容、機関設計、株式に関する事項などの根本的な規則を定款に記載しておきます。いってみれば、定款とは会社の憲法にあたるようなものです。
定款をきちんと整備しておかないと、事業を継ぐ後継者の方が思わぬところで失敗をする可能性すらあるのです。
では定款を整備するとは、具体的にはどのようにするのでしょうか?
たとえば、相続人に対して株式会社の株式を会社に売り渡すように請求できる規定や、特定の株主からだけ株式会社が自己株式を取得し、他の株主には自分も売主に加えるよう請求できないとする定めをするケースがあります。
今の経営者がしっかりと会社を支配しているあいだに、将来に備えた定款の整備をしておきましょう。
種類株式の発行に関して
種類株式とは、会社法の規定の範囲内で定款に内容を定めることによって、株主の権利について普通株式とは違った権利を付与したり、株主の権利の一部を制限または剥奪することのできる株式のことです。
株式会社は、以下の9つの権利について異なった種類株式を発行することが可能です。
もちろん9つの権利のうち、いくつかの権利を重複して付与したり、いくつかの権利を制限または剥奪するように、内容を組み合わせて種類株式を発行することも可能です。
1.剰余金の配当
2.残余財産の分配
3.議決権制限株式
4.譲渡制限株式
5.取得請求権付株式
6.取得条項付株式
7.全部取得条項付種類株式
8.拒否権条項付種類株式
9.種類株主総会において取締役または監査役を選任することができる選任条項株式
もちろん9つの権利のうち、いくつかの権利を重複して付与したり、いくつかの権利を制限または剥奪するように、内容を組み合わせて種類株式を発行することも可能です。
これらの種類株式を発行することによって、議決権制限株式により相続人の中でも後継者のみに議決権を集中させることもできます。このようにすることで、会社経営の安定化を図ることができます。
また、後継者である子供へ事業承継をさせたいと考えながらも、まだ経営権の全てをその子供に譲ることに不安な場合には、親が拒否権条項付種類株式を保持することができます。
このようにすることで、いつでも拒否権を発動することができる状態にしておき、経営が誤った方向に進みそうなときに歯止めをかけることもできます。
種類株式を発行する場合には、必ず種類株式ごとの発行可能株式総数も一緒に定款で定めておく必要があります。
種類株式の発行の定款変更決議のときに、併せて定款の変更をしなければなりません。