末期のがんに侵されたおひとり様のご相談があったケース(越谷市)
状況
埼玉県越谷市のSさんは55才にして末期のがんであることが判明しました。
配送業の仕事を自分でやっていたSさんは、独身で子供もおらず、兄弟とは音信不通になっていました。
当事務所に相談に来られた時点で、医者の診断では余命3か月といわれていたようです。
Sさんにお会いした当初は、それほど体調は悪くなく、がんを患っているとは思えないほどお元気に見えました。
Sさんには、迫りくる死について覚悟はできているものの、最後まで自分の意思に基づいて人生を全うしたい気持が強くありました。
そしてご自分の亡くなった後の諸手続きへの心配、残った財産は若いころに世話になったある団体にすべて寄付してほしいという希望、そして音信不通の兄弟に
自分のことは死亡するまでは知らせずにいてほしいという願いをSさんは抱いていました。
当事務所としても、Sさんの願いを最も実現できるように、何度もお会いして直接話を聞き、できる限り早急に解決策をまとめることにしました。
当事務所での解決策
(存命中の解決策)
・見守り(安否確認)契約
・公正証書遺言作成
・死後事務委任契約
・尊厳死宣言公正証書作成
(死亡後の解決策)
・遺言執行者就任及び遺言執行事務手続
・死後事務手続
Sさんには時間がありませんでした。しかし人生の最後に携わることですので、Sさんのご都合と体調に合わせてこちらからうかがって、納得のいくまで話をしていただきました。
Sさんの財産をある団体に寄付するために、司法書士を遺言執行者とする公正証書遺言を作成し、遺言事項以外の手続きを処理するために、死後事務委任契約を司法書士と結びました。Sさんも延命措置をやらないで死を迎えたいと考えていたため、尊厳死宣言公正証書を作成しました。
そして、当事務所に最初に相談に来られてから4か月後に、Sさんはお亡くなりになりました。
死亡したその日から死後事務の手続きは始まります。
葬儀社への連絡から始まり、死亡診断書の受領からご遺体の搬送など、現実の「人の死」というものに向き合わなければなりません。
葬儀については、誰も参加しなくても形だけでもやってほしいとの希望がありましたので、生前に葬儀社と契約をしていただき、ご自分で葬儀の方法を決めていました。
葬儀のあとは、司法書士が遺言執行者として、預金の解約とSさんの希望する団体への寄付を滞りなく行いました。
また、音信不通であった兄弟に対しても、遺言執行者としての義務として、事務の経過及び結果を報告させていただきました。
司法書士からひと言
相続の手続きには、今回のケースのように、人の死のリアルな現場に直接関与することもしばしばあります。
依頼者様の人生の最後に携わることですので、しっかりとお話をうかがい、信頼関係を築くことが不可欠です。
老いへの不安や、孤独感、死への恐怖、別れの寂しさなど、死に近づくにつれだれにでも様々なマイナスの感情が渦巻くようになっていきます。
依頼者様のそうした感情を和らげるためにも、このケースでの解決策はとても有効であるといえます。
Sさんからも「人生の最後を自分で決めることができ、尊厳のある生き方と死に方ができる」というありがたいお言葉をいただきました。