遺言書は残したものの、認知症への備えをしていなかったケース(川口市)
状況
埼玉県川口市にお住いのTさん(87才)は、2年前に近くに住む甥の勧めもあって、公証役場に行って、公正証書遺言を作成しました。
Tさんには子供がおらず、近くに住む甥が何かと面倒を見ていました。
Tさんは小さな工務店を長年やってきて、アパート、預貯金、投資信託など合わせて2億円ほどの財産がありました。
まだまだお元気なTさんでしたが、もしものことがあると、兄弟や甥、姪を合わせると総勢13人が相続人になるので、相続争いが起きそうな状況だったのです。
公正証書遺言さえ残しておけば、相続のことは大丈夫だと安心していたTさんでしたが、本人が認知症になってしまうと、預金を下ろせなくなるし、老人ホームなどの施設に入所もできなくなるということを聞きました。
Tさんは、まさかとは思いましたが、念のために当事務所に相談に来られました。
当事務所での解決策
- ・以前に作成した遺言公正証書の内容の確認
- ・司法書士と任意後見契約を締結
以前作成した遺言公正証書の謄本をお持ちになっていたので、そちらの内容の確認をさせていただきました。
内容には特に問題はなく、Tさん自身の希望も遺言を作成した当時と変わっていなかったため、遺言公正証書を作り直す必要はありませんでした。
しかし、認知症などでTさんの判断能力が低下した場合の備えがなかったために、司法書士を受任者とする任意後見契約を結ぶこととなりました。
司法書士からひと言
自分では大丈夫だと自信を持っていても、認知症などによる判断能力の低下する状況もあり得ます。それに対する備えをしていない場合、本人名義の預金が下せなくなったり、老人ホームなどの施設に入居することが困難になる可能性が出てきます。
そうなった場合、家庭裁判所が選任する者が後見人となる法定後見を申し立てる必要があります。つまり、見ず知らずの第三者が介入し本人の財産を管理し、本人のためになること以外には財産を使えなくなってしまいます。
また、管理する財産の額が多くなると「後見制度支援信託」という複雑な制度を利用するよう家庭裁判所から求められます。
後見制度支援信託となってしまうと、せっかく残した遺言の通りに財産がいきわたらなくなる可能性もあります。
参考リンク先→遺言を破壊する後見制度支援信託
任意後見契約を結んでおけば、認知症になる前に、将来財産管理などをお願いする人を自分で決めておくことができます。
遺言を残そうとお考えであれば、任意後見契約をセットで備えておくことをお勧めします。