後見制度支援信託とは | 越谷 相続・遺言 相談室
遺言を破壊する後見制度支援信託とは?
ここでは、せっかく遺言を残しても本人が認知症になり、法定後見人がついて「後見制度支援信託」がはじまった場合、遺言の内容通りにいかなくなるケースがあることをご理解ください。
後見制度支援信託とは?
被後見人の財産のうち、日常的に必要となる金銭を信託銀行などに預けて、簡単に引き出せないようにして、生活費として必要十分な金銭を預貯金等として後見人が管理する仕組みです。
後見人による財産の流用などの不正事例が後を絶たないことから導入が検討され、平成24年(2012)2月から取り扱いが開始されました。
つまり、後見制度支援信託制度が導入させると、必要だからといって信託銀行から金銭を自由に引き出すことができなくなり、お金が必要な場合には、家庭裁判所への申請が不可欠となります。
成年後見制度の法定後見、および未成年後見制度の被後見人がこの制度の対象となり、主に1千万円以上の高額財産があるケースでの適用が想定されています。
任意後見契約を結んだケースでは、後見制度支援信託の適用はありません。
遺言書の内容通りに行かなかったケース
遺言者であるAさんは「長女BにX銀行の預金債権の一切を相続させ、二女CにはY銀行の預金債権の一切、長男Dには自宅不動産とその余の預貯金を含むその他一切の財産を相続させる」という遺言公正証書を残しました。
遺言書作成当時、X銀行には3000万円、Y銀行には2000万円の残高がありました。
数年後Aさんは認知症に罹り、後見開始の審判をうけ、第三者の成年後見人が就任しました。
Aさんは、遺言執行者を信頼していた友人にしていましたが、家族にも遺言を残したことを黙っていたため、就任した後見人はAさんの遺言の存在を知りませんでした。
財産が多額であるという理由から、家庭裁判所の指示で、後見制度支援信託制度を利用することとなり、後見人はX銀行とY銀行のAさんの口座から預金を引き出し、生活費を除いた金銭をすべて信託銀行に預ける手続きを行いました。
それからまた数年後、Aさんが他界しました。
後見制度支援信託制度を利用したため、X銀行にもY銀行にあった預金はすべて信託銀行に移っています。
そのため、「長男Dには自宅不動産とその余の預貯金を含むその他一切の財産を相続させる」という遺言の文言により長女Bさん次女Cさんが遺言で受ける相続財産はなくなり、ほぼすべてのAさんの遺産を長男Dさんが受け取ることとなってしまいました(Bさん、Cさんは遺留分減殺請求は可能です)。
良かれと思って残した遺言により、状況によっては希望通りに財産が受け継がれないケースもあり得ます。
こうしたケースを避ける意味でも、遺言を残す場合には任意後見契約を一緒に結んでおくことはとても重要であるといえます。